学術国際会議派遣報告(ドイツ語文学文化専攻)
文学部 林明子教授が「第14回ドイツ語圏日本研究者会議」に参加、
研究発表を行いました。以下、学術国際会議派遣の報告をいたします。
【会議名】 第14回ドイツ語圏日本研究者会議
(14 Deutschsprachiger Japanologentag)
【主催機関名】 マルチンルター大学 ハレ・ヴィッテンベルク
(Martin-Luther-Universitaet Halle-Wittenberg)
【開催地】 ハレ(ドイツ)
【発表日】 2009年9月30日(水)
【発表のテーマ】
「同一表現における韻律的特徴のバリエーションとその知覚」
【発表の内容】
構成
同一表現における韻律的特徴のバリエーションとその知覚
林明子(中央大学)、西沼行博(フランス国立科学研究センター)、
谷部弘子(東京学芸大学)
0. はじめに
1. 研究目的
2. 先行研究と現在の課題
2.1. 産出の前提としての知覚
2.2. 韻律的特徴のバリエーション
3. 調査の対象と方法
4. 調査結果
4.1. 概観
4.2. 知覚の傾向
4.3. 具体例
4.3.1. イントネーション:高さ
4.3.2. リズム:長さ
5. 結論
要旨
発話行為の実現にあたって語彙は重要な役割を果たすが、韻律が発話の
意味を決定することもある。韻律には、アクセント・イントネーション・リズム・
ポーズが含まれる。本発表ではイントネーションとリズムを取り上げ、特に
日本語の発話の最終音節の高さ(ピッチ)と長さ(持続時間)に焦点を当てた。
そして、物理量の変化である高さ(ピッチ)と長さ(持続時間)を、ドイツ語および
日本語の母語話者がどのように知覚するかを明らかにした。まずデータを
統計的に処理し、その結果に基づいて、言語ごとの傾向を明らかにした。
続いて母語からの干渉が見られる典型的な具体例を示した。
主要因を「言語」「発話」「韻律のバリエーション」とした分散分析の結果、
ドイツ人日本語学習者と日本語母語話者の結果に、「高さ」についても「長さ」に
ついてもすべての要因で有意差が認められた。交互作用についてもすべて
有意であった。北京で実施した同じ実験でも、中国人と日本人の知覚は
異なっており、特に「高さ」で顕著であった。また中国人とドイツ人も異なって
いた。
ドイツ人には最終音節を「上昇」と聞く傾向があり、その傾向は実験で用いた
発話すべてに認められた。「長さ」においては、ドイツ人は日本人に比べて
「短い」と聞く傾向が見られた。「上昇」で「長い」という特徴を併せ持つ韻律
バリエーションでは、ドイツ人の回答の傾向は日本人と似た傾向を示していた。
一方、「下降」で「長い」という特徴の組み合わせでは、両者の知覚の仕方に
違いが大きかった。
本発表では、韻律的特徴のうち、「高さ」と「長さ」の知覚を取り上げたが、
「高さ」(イントネーション)と「長さ」(リズム)の双方で「知覚の転移」が観察
された。これは、語アクセントの大規模調査を支持する結果でもあった。
研究結果は将来的に、外国語教育にも応用される必要がある。