唐橋文准教授が、ヴェニス大(伊)で講演をなさいました。
古代史の唐橋文准教授が、Universit? Ca' Foscari, Venezia(通称ヴェニス大学) Dipartimento di Scienze dell'Antichit? e del Vicino Oriente で講演をなさいました。
【日時】 2009年3月17日
【場所】 Universit? Ca' Foscari, Venezia Dipartimento di Scienze dell'Antichit? e del Vicino Oriente
【講演タイトル】 "Argument Structure of Sumerian Verbs:Causative Alternation " :「シュメール語動詞の項構造(アーギュメント・ストラクチャー):使役交替」
【概要】
この講義は、シュメール語のいくかの動詞のcausative construction(使役構文)に光をあてることを目的とした。 取り扱ったシュメール語の動詞は、(1)e3「出る」、ku4「入る」、gub「立つ」、nu2「横たわる」、til3「生きる」等(位置や状態、状況の変化を表す動詞)と(2)gu7「食べる」、nag「飲む」、zi「知る」、igi?du8「見る」等(食べ物や知識、情報等を「摂取」する意味合いを持つ動詞:ingestive verbs)である。
シュメール語の議論に入る前にいろいろな言語の使役構文を見てみると、次の三つの主要なタイプがあることがわかる。
(a)日本語の「(あ)せ」のような形態素を挿入するタイプ(例、行く/行かせる);(b)英語の “make”のような使役動詞を使うタイプ(例、he goes/I make him go);(c)英語の “walk”のように動詞が使役の意味をも持つタイプ(例、the dog walks「犬が散歩する」/I walk the dog「私が犬を散歩させる」)。
それでは、上の第一群と第二群のシュメール語の動詞は、どのようにして使役構文を作るのだろうか?また、それらは、上記の(a)?(c)のいずれかのタイプにあてはまるのであろうか?この問いに答えるべく、シュメール語文献から、それらの動詞を含む文章を取り出して分析を加えた。その結果、第一群の動詞はAmbitransitive vebrs of type S=O,第二群の動詞は Ambitransitive vebrs of type S=A と分類されるが、いずれもタイプ(c)(Lexical Causativeとも呼ばれる)に解釈できることがわかった。すなわち、動詞チェーンの接頭辞が動詞の意味の違いに影響を及ぼしている形跡は全く見あたらないという発見があった。