ケータイで最適なマイサポーター探し 教育支援システム「キャンパスコミュニティエイド」の研究成果を理工学部の学習指導に運用開始
中央大学(東京都八王子市、学長:永井和之)は、学生の自主的な学習への効果的な支援を行うため、データベース・情報通信・感性工学の技術を連動させた新しい教育支援システム「キャンパスコミュニティエイド」を共同印刷㈱(本社:東京都文京区、代表取締役社長:稲木歳明)との共同で開発し、本学理工学部(東京都文京区、学部長:田口東)後楽園キャンパスで本格運用を9月より開始いたします。このシステムを導入する事により、学生の学習内容に対する理解・興味・自主的に学ぶ姿勢が強化されて、「学士力」が大幅に高まることが期待されています。
<研究開発の背景>
近年、「大学の教育力」「卒業する学生の学士力」の質を高める必要性が強く指摘されてきています。本学理工学部では、実学重視の伝統から、演習時間を十分にとったカリキュラムを提供してきていますが、その学生による授業評価でも「演習時間内だけでは応用できるまでの時間が足りない」「親身に面倒を見てくれる上級生に授業時間外の自主的な学習を支援して欲しい」等の声が寄せられており、これらの学生のニーズに十分に応えることが教育上の課題でした。
このような社会的なニーズに応えるためには、知識ベース・情報通信・感性工学の技術を連動させた、学習支援のためのマッチメイキングの新しい技術が必要との発想から、キャンパスコミュニティエイドの研究開発を始めました。
同研究開発には、本学理工学部経営システム工学科のヒューマンメディア研究室(加藤俊一教授)と、共同印刷株式会社が参画し、共同研究で開発された技術・特許が活用されています。
<新技術の概要>
キャンパスコミュニティエイドでは、学習者が携帯電話の通信機能を利用して個別指導のリクエストをシステムに送ると、システムは、学習者およびサポーターを務める上級生・院生・卒業生などのそれぞれの個人特性(学習記録や他者からの評価など)の適合性や、両者に共通の友人・共通の趣味の有無などから、互いに感じる親近感などの感性的なつながり感を総合評価して、「マイサポーター」を発見します。さらに、両者が置かれている情報通信環境やTPO(時間・場所・状態)に基づいて、適切な個別指導の手法を選択・提供します。
本システムの特徴は以下のとおりです。
①個人特性の利用によるマッチメイキング:
個々の学習者が演習課題に取り組んだ履歴や学習の進み具合、個々のサポーターの得意科目の登録だけでなく、サポーターの目から見た理解の程度、理解につながった説明の仕方、サポートを受けた人の目から見た親切さ、教え方のうまさなどの他者からの評価情報に基づいて、依頼を出した学習者の特性にマッチした適切なサポーター候補者群を選び出します。
②つながり感特性による親近感の考慮:
個々のサポーター候補者と、サポートを求める学習者一人一人の間での「演習の個別指導」の実績だけでなく、共通の知人の有無、共通の知人を通じての紹介、共通の趣味・話題などから「親近感」を推定し、最適なサポーター候補者を絞り込みます。
③情報通信環境・TPOによるサポート方法の決定:
学習者が今どこで演習課題に取り組んでいるか、サポーターが今どこにいてどんな支援の方法が可能かなどのTPO情報に基づき、サポーターおよび個別指導の方法(対面あるいは電子メール・掲示板を通じた遠隔)などを決定します。
<サービスの現状と今後の展開>
本年度は、4月より本学理工学部の経営システム工学科・土木工学科などでの試験運用を開始しており、新入生・TA(大学院生のティーチングアシスタント)の利用評価を受けています。また、9月より、機能の拡張を図ると共に、本格的に、理工学部の全学科への展開を計画しています。
また、個々の学生の学習の進み方を表すデータを「学習カルテ」として、教員・TAが共有し、その学習の到達段階に合わせてより的確な個別指導を行えるように、機能拡張する計画です。
さらに、より広範な応用として、卒業生であるOB・OGもキャンパスコミュニティにネットワーク化して、在校生へのキャリア指導へも活用する計画です。
キャンパスコミュニティエイドを活用することにより、新入生の段階での専門基礎科目の学習支援から、理工系のスペシャリストとして産業界で活躍することを目指したキャリアデザイン支援までを通じて、①個人特性のマッチメイキングによる対面式学習の支援、②学習カルテ共有による個別指導の支援、③OB・OGとのコミュニケーションチャネル提供によるキャリアデザインの支援、という3つの側面から、学生への高度な学習支援を展開することができます。
これらの技術と利用評価の詳細は、9月8日~10日に大妻女子大学で開催される日本感性工学会大会で発表する予定です。