植物オルガネラRNA編集装置本体の正体に迫る 理工学部助教 奥田 賢治の共同研究成果がThe Plant Cell誌へ掲載決定
理工学部助教(生命科学科・小池裕幸研究室)奥田 賢治の共同研究成果が、植物科学分野で最も権威ある学術誌であるThe Plant Cell誌(Five-Year Impact Factor: 10.224)へ掲載されることが決定しました。オンライン版では9月22日付で公開されています。
掲載された論文は“Two Interacting Proteins are Necessary for the Editing of the NdhD-1 Site in Arabidopsis Plastids”です。
植物の細胞内小器官(オルガネラ)において、独自のゲノムを持つ葉緑体とミトコンドリアでは、RNA上でC塩基をUへと変換する“RNA編集”が高頻度で行われています。植物オルガネラのRNA編集についての研究では、RNA上に無数に存在するCのうち、特定のCのみが編集を受ける“編集サイト認識の分子機構”とそこに関わる“編集装置の実体解明”が課題となっています。前者の疑問はこれまでの研究から、“pentatrico-peptide repeat(PPR)蛋白質”という蛋白質が、個々の編集サイト周辺配列を特異的に認識していることで説明がつけられました。RNA編集に関わるPPR蛋白質の多くはそのC末端に“DYWドメイン”と呼ばれる領域を持っています。DYWドメインはヒトRNA編集酵素の触媒部位と相同性を示す配列を含んでいることから、編集活性(CからUへの変換反応を触媒)の正体ではないかと考えられています。しかしながらDYWドメインがRNA編集に重要であるかどうかは明らかになっていませんでした。
今回の研究では、シロイヌナズナゲノム中に存在するDYWドメインのみを持つ蛋白質DYW1について遺伝学的に解析を行った結果、DYW1がPPR蛋白質CRR4と相互作用しており、葉緑体ndhD-1サイトにおける RNA編集に必須であることを明らかにしました。この成果により、長年謎となっている植物オルガネラRNA編集装置の本丸である編集酵素の正体の解明が大きく進むと考えられます。
本研究成果は、フランス国立農学研究所・Claire Lurinグループディレクター、西オーストラリア大学・Ian Small教授、京都大学・鹿内 利治教授を含めた国際研究グループの共同研究によるものです。
ご興味をお持ちの方は以下のリンク先をご覧ください。