公開講演会のお知らせ
人文科学研究所主催の公開講演会を開催いたします。
大学院生・学生の参加も歓迎いたしますので、お誘いあわせの上、ご参加いただければ幸いです。(人文科学研究所)
◆講師:Wang, Celine氏(パリディドロ大学准教授)
◆テーマ:人民と社会契約-ルソー『社会契約論』の中国における受容
ルソーの『社会契約論』は、日本を経由して19世紀の終わりに中国に紹介された。20世紀のはじめには、数千年に及ぶ皇帝による支配体制に終止符を打った1911年の辛亥革命に先立って、同書は革命を鼓舞する主要な典拠のひとつとなった。同書はまた、中国の若い知識人たちに、自分たちの国の文化について深く反省するように促した。「民」と「民約」は、ルソーの『社会契約論』の鍵となる二つの概念である。民とは、政治体をつくるべく集まることを選んだすべての者を意味する。この政治体の構築は、民約(pacte social)と呼ばれる行為の結果であ る。「この行為を通じて、民(le peuple)は人民 (un peuple) となる」。すなわち、この行為は、立法権、つまり共同体の要務を決定する権能を集団全体に与える創設行為である。この二つの概念は、中国の伝統的な思想からみれば、まったく新しいものであった。中国語で「民」の語は、各人を区別せずに全体として一括りにした集合を意味するのではなく、君(皇帝や王)や官僚と対となる具体的な人々を意味していた。「義は民にあり」という伝統的な観念によれば、民は国家の礎であり、尊重されなければならないのではあるが、決して国事の決定権を持つことはない。『社会契約論』の初期の中国語訳を比較検討する作業を通じて、これら二つの鍵となる概念がどのように訳されているかを詳しく検討し、ルソーの主張が中国の近代思想に新たに何をもたらしたかを明らかにしたい。また、ルソーの主張が、現代、そして将来の中国においてどのような役割を担うのかも問いたい。
◆企 画:人文科学研究所 研究会チーム「ルソー研究」