公開研究会のお知らせ
◆講 師:麦谷 綾子 氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所研究主任)
◆テーマ:日本語を母語とする子どもたちの音声言語獲得
母語音声システムの獲得過程はこれまで主に英語圏の乳児を対象に研究が行われ、豊富な知見が得られてきた。しかし、個別言語はそれぞれ独自の音声特徴を持つため、単一言語で得られた知見が必ずしも他の言語の獲得過程にあてはまるわけではない。このような背景から、講演者はこれまで日本語を母語とする乳幼児を対象とし、英語に比べて音韻や韻律など種々の音声構造に大きな差異が認められる日本語の音声システムの獲得に焦点をあてた研究を行ってきた。その結果、促音・長母音・ピッチアクセントといった日本語に特有の音声特徴の知覚構造化過程を明らかにするとともに、これらの音声特徴を使った語意学習が可能になる時期を検証・同定した。さらに最近では対象を幼児に拡張し、こうした音声特徴の知覚には乳幼児期を通じて全般的に困難が伴うことを示した。また、生成面では、大規模乳幼児音声コーパスの解析から言語リズムの獲得を検討し、日本語特有のモーラリズムが生後2歳ごろまでに獲得されることを明らかにした。
本講演ではこうした日本語音声の知覚・生成発達に関する知見を紹介しながら、乳幼児期の日本語音声システム獲得について実証的に議論したい。
◆企画:人文科学研究所研究会チーム 「視覚認知機構の発達研究」