公開研究会のお知らせ
◆講 師:白井 述 氏(新潟大学准教授)
◆テーマ:知覚発達の多層性-運動視の発達を例に
日常的に意識することは非常に少ないが、一般に知覚の機能は多層的、階層的な構造を持つ。本発表では、主に動的情報を視覚的に知覚する機能、すなわち運動視の初期発達に焦点をあてながら、乳児期における知覚発達の諸相が知覚機能の多層性を反映したものである可能性について論じる。運動視の機能はGibson(1950, 1979)などによって指摘されるように、私たちの身体運動の知覚、制御に重要な役割を果たす。特に、光学的流動と呼ばれるような大域的な視運動パタンは、観察者自身の移動を表象する強力な視覚情報となる。こうした光学的流動の知覚が、乳児期においてどのような発達的変化を示すのかについて、発表者自身がこれまでに関与してきた研究の成果を中心に報告する。またそうした光学的流動知覚の発達が、乳児の能動的な移動行動の発達とダイナミックに相互作用しながら変化していく可能性について示す。それらの一連の研究成果に基づいて、運動視の発達の各段階と、ヒト一般における運動視機能の諸側面との対応関係を論じながら、適応的観点からそれらの発達的、機能的特徴について解釈を試みたい。
◆企 画:人文科学研究所 研究会チーム 「視覚認知機構の発達研究」