森田茂之氏による特別講演 第15回と第16回
微分トポロジーの研究と展望等について, 森田茂之氏(東大・名誉教授)に自由に講演していただきます.
テーマ: 「特性類と不変量」
全体への梗概:
向き付けられた閉曲面に対するガウス・ボンネの定理は, ガウス曲率の総和とオイラー数との間の密接な関係を与える美しい定理である. 現代幾何学は, これをさまざまな形に一般化しつつ発展してきた. その中で中心的な働きをしてきたのは, 特性類と不変量という考え方である. この講義では, これらの道筋をいくつかのトピックスを取り上げつつ概観する. そして後半では, 新しい不変量をいかにして作るかについて, 現在研究中の一つの方法を述べる. コンピュータによる実験的な計算なども例示する予定である.
第11回から第15回までへの梗概:
リーマン面のモジュライ空間およびグラフのモジュライ空間の定義を述べ, その組み合わせ的構造について知られている基本的な結果を解説する. 具体的には, タイヒミュラー空間およびアウター空間の, 写像類群および自由群の外部自己同型群の作用に関して同変なセル分割を記述する. 続いて, これらのモジュライ空間のコホモロジーについての解説を始める. 関連して, 種数1の場合が一般の種数を扱う場合に, どのように模範的, あるいは種数0と種数2以上の場合を結ぶ架け橋的な役割を果たし得るかについての考察も始める. これは, モジュライ空間のコホモロジーおよび算術的写像類群の研究にとって極めて重要な観点である.