鈴木俊幸教授の著書 『江戸の本づくし 黄表紙で読む江戸の出版事情』 (新刊紹介)
『江戸の本づくし 黄表紙で読む江戸の出版事情』
(平凡社新書 566)
平凡社 2011年1月刊行
ISBN 978-4-582-85566-1 819 円(税込)
◆ 平凡社ホームページ図書目録より
赤本、黒本、青本などと表紙の色で呼ばれた江戸生まれの絵本(草双紙)のなかから、
青本をいわば戯作化して、機知的な笑い、大人のニンマリを盛り込んだ絵本が誕生した。
黄表紙がそれである。
その文化史的な意義についてはけっこう高く評価されてきたが、まともにそれを読んで
みるという酔狂な人はなかなかなかった。ここにその酔狂な著者は、数ある作品のなか
から山東京伝作の『御存商売物(ごぞんじのしょうばいもの)』、人の姿をした江戸の
出版物が総出で娘かどわかしの一幕を演ずるおはなしを選んで、きっちり読んで見せる。
黄表紙を読むとはなにより「絵」を読むこと。絵に仕組まれた謎を解き、「うがち」や
「しゃれ」や「地口」などなどにいちいちクスリと笑っていくとき、江戸の草紙の世界が、
そして、その頃にはまるで普通のことだからこそ今やわからなくなった都市江戸の文化の
生きた姿が見えてくる。面白いうえにためになる、お得な1冊。
◆ カバー見返しより
黄表紙『御存商売物』のおはなしは、
赤本、黒本、青本、洒落本、
柱隠しに一枚絵、吉原細見、咄本……
江戸の出版物が人の姿で総登場する、
娘かどわかしのてんやわんや。
絵の謎を解き、地口やしゃれを十分に味わうとき、
草紙が息づく都市江戸の文化が見えてくる。
* * * 目次より * * *
はじめに
黄表紙『御存商売物』を読む
第一章 上巻
今をときめく浮世絵や戯作の草紙たち、
その蔭で上方本の画策にのせられる赤本・黒本
1 作者北尾政演の口上
2 夢のはじまり
3 「青本」宅、月並みの「会」
4 「柱隠し」と「一枚絵」の恋
5 「青本」宅での日待
6 吉原行きの相談
第二章 中巻
浅草・吉原のにぎわい、一枚摺や芸能関係の草紙たちと
旧態を保つ草紙たち、そして悪事の決行
1 浅草奥山、覗きからくり
2 浅草二十軒茶屋
3 遊女「錦絵」の座敷
4 黒本・赤本の謀計
5 「柱隠し」誘拐
6 お定まりの夫婦げんか
第三章 下巻
唐詩選・源氏物語など書物の力による秩序回復、
草紙と江戸の繁栄、めでたしめでたし
1 「柱隠し」捜索
2 乗せられる「一枚絵」、「吉原細見」の男気
3 「一枚絵」殴り込み
4 「唐詩選」「源氏物語」の教訓
5 往来物による関係者処罰
6 江戸の春