講演会「正二十面体準結晶における3d遷移金属の磁気秩序とスローダイナミックス」
講演者: 柏本 史郎 氏
(北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門)
準結晶はその結晶構造が“非周期の長距離秩序(準周期性)”にしたがう特異な物質群である。そこで、磁性元素を含む準結晶に対しては反強磁性的な相互作用による“準周期的な長距離磁気秩序”の出現に以前から関心が持たれているが、現在のところ実験的に実証された例はない。これまで報告された磁性準結晶ではほぼ例外なくスピングラス的な挙動(低温において磁場中冷却磁化率と磁場零冷却磁化率との間の差異)を示し、一方で中性子回折実験においては磁気散漫の観測に基づき、正二十面体対称性を反映した短距離相関の発達が報告されている。今回は構造完全性が高く、単相性の高い試料が比較的容易に得られるTsai型Zn-Sc-M正二十面体準結晶(M=鉄族元素)を中心に、準結晶の磁気秩序の実際について考察を試みる。