FLPジャーナリズムプログラム松野良一ゼミが、「大韓航空機007便撃墜事件」の遺族を取材し、その証言を『中央評論』で特集しました。
「大韓航空機007便撃墜事件」とは、1983年9月1日、ニューヨーク発アンカレッジ経由ソウル行きのボーイング747型機が、サハリン上空で領空を侵犯したため、ソ連戦闘機に撃墜された事件です。日本人28名を含む乗員乗客269名全員が犠牲になりました。
当時は東西冷戦下だったため、真相究明よりも米ソの情報を巡る駆け引きが優先され事件の詳細が伝えられることもなく、遺体も遺品も遺族のところに戻ってきませんでした。当時の報道は、米ソの思惑や情報戦、あるいは事件の謎を推測するものが多く、遺族の言葉や思いがまとまって伝えられることはありませんでした。
このため、FLP松野良一ゼミでは2009年から3年間をかけて、遺族を探し出し証言を記録する作業を進めてきました。取材は、南は鹿児島、北はサハリンまで及び、最終的に日本人被害者10名の遺族から話を伺うことができました。
遺族の方々に共通していたことは、遺体も遺品も無いため愛する人の死を受け容れ難しいこと、東西冷戦のため事件の真相が不透明なままで終わったことへの苛立ち、そして、悲しみや苦しみを抱き続けながらも現在まで強く生きてこられたことでした。遺族の方々の言葉は、命の重さや平和とは何かという普遍的な問いを、私たちに投げかけているように思います。
特集「大韓航空機007便撃墜事件」が組まれた『中央評論277号』秋号(中央大学出版部発行一冊300円)は、中央大学生協、多摩地区の書店などで販売されます。
<問い合わせ先>
中央大学出版部(042-674-2351)
中央大学総合政策学部 松野良一研究室 ( 042-674-4169,matsuno@fps.chuo-u.ac.jp)