公開研究会のお知らせ
◆報告者:伊藤 洋司研究員
◆テーマ:ロベルト・ロッセリーニ『イタリア旅行』論
ロベルト・ロッセリーニを代表的監督とするネオレアリスモは、戦争で崩壊したイタリアの社会を描いて世界中に衝撃を与えた。しかし、ロッセリーニが『イタリア旅行』で中年夫婦の離婚の危機を描くと、大多数の観客はこの作品の素晴らしさを理解できなかった。『無防備都市』はレジスタンス運動を描いたから優れた映画なのではなく、ロッセリーニにとって、レジスタンス運動を描くことも中年夫婦の離婚の危機を描くことも結局は同じことだった。ロッセリーニの映画の重要性はその反スタジオの美学にあり、これは、スタジオ・システムの「演出の映画」に対する「撮影の映画」と言ってもよい。この点で、ロッセリーニのネオレアリスモはヌーヴェル・ヴァーグに決定的な影響を与えた。
今回は以上のような観点から、『無防備都市』の有名な場面を参考にしつつ、『イタリア旅行』のラスト・シーンを分析してみたい。
◆企 画:人文科学研究所 研究会チーム 「イノヴェーションと芸術」