森田茂之氏による特別講演
微分トポロジーの研究と展望等について、森田茂之氏(東京大学名誉教授)に自由に講演していただきます。
全10回程度の講演を予定しています。
【講演者】
森田茂之氏(東京大学名誉教授)
【テーマ】
「特性類と不変量」
【日程】
?第1回 (6号館3階6301室)
?日時: 5月19日(水)16:30-18:00
?第2回
?日時: 6月2日(水)16:30-18:00
?第3回
?日時: 7月7日(水)16:30-18:00
?第4回
?日時: 9月1日(水)16:30-18:00
?第5回
?日時: 10月8日(金)16:30-18:00
?第6回
?日時: 11月5日(金)16:30-18:00
?第7回
?日時: 12月10日(金)16:30-18:00
【概要】
向き付けられた閉曲面に対するガウス・ポンネの定理は、ガウス曲率の総和とオイラー数との間の
密接な関係を与える美しい定理である。
現代幾何学は、これをさまざまな形に一般化しつつ発展してきた。
その中で中心的な働きをしてきたのは、特性類と不変量という考え方である。
この講義では、これらの道筋をいくつかのトピックスを取り上げつつ概観する。
そして後半では、新しい不変量をいかにして作るかについて、現在研究中の一つの方法を述べる。
コンピュータによる実験的な計算なども例示する予定である.
--第1回から第3回までへの梗概--
?最初の2-3回の講義では, 一つの向き付けられた閉曲面の場合を取り上げる. この場合は初等的ではあるが, さまざまな形に一般化するための基本的な構造をすべて備えていると言っても過言ではない. 種数0すなわち球面, 種数1すなわちトーラス, そして種数2以上の閉曲面と, 3種類に大別される曲面の幾何学を, ホモロジー群, セル分割, 基本群, ヤコビ多様体, シンプレクティック群の表現, あるいは3次元多様体論等のさまざまな観点から調べ, それらがどのようにして一般化されうるかについての考察を始める.
--第4回からの梗概--
?これまでの3回の講義では, 一つの向き付けられた閉曲面 の場合を取り上げ, とくに種数がヤコビ多様体とシンプレクティック群の表現の観点から, どのように捉えられるかを見た.
?引き続く2-3回の講義では, これらの考えが曲面をファイバーとする種々の曲面バンドルの場合に, いかにして拡張されるかの考察を始める. その際, 曲面の1次元ホモロジー群の生成する多項式代数, テンソル代数, 自由リー代数等が自然に登場し, それらのシンプレクティックな微分全体のなす無限次元リー代数が重要な役割を演じることを見る. これらのリー代数の構造を, シンプレクティック群の表現論を用いて解析することにより, リーマン面のモジュライ空間, グラフのモジュライ空間, 横断的にシンプレクティックな葉層構造, さらには絶対ガロア群やある種の4次元位相多様体等, 曲面に関わる多様な対象の特性類や不変量を構成することができるのである.
?講義では, コンピュータによる計算例なども例示しつつ, これらの特性類・不変量について「発見的な観点」からの解説 を始めたい.